1. 回遊魚とは?どんな魚がいるの?
  2. 回帰本能があるふぐはどの種類?
  3. ふぐの回帰行動はどんなことをするの?
  4. ふぐのタンパクな身と回遊魚の関係性
  5. どのくらいのスパンでどこへ行って帰ってくるの?

1. 回遊魚とは?どんな魚がいるの?

回遊魚という言葉を、多くの方は耳にされたことがあるかと思います。回遊魚とは文字通り「回遊」を行う魚を意味しますが、では回遊とは一体何なのでしょうか?
回遊とは、海や川に棲む生きものが、成長段階や、季節の環境変化などに伴い、生息域を変えるために移動することを指します。例えば広大な外洋を、数千キロにも渡って大規模に移動するマグロ類やカツオ、サンマ。これらの魚たちは、高度な遊泳能力を備え、餌場や産卵場を求めて長い旅を行う、代表的な回遊魚です。
ですが、回遊魚の行う移動は大規模なものに限りません。例えば春から夏を浅瀬で過ごし、冬に深場に潜るヒラメのように、一見回遊魚とは対極に位置しそうな底生魚の中にも広義の回遊魚に含まれる魚はいます。
また、海から川への遡上する魚も回遊魚であり、産卵のために川へ上るサケ、逆に海へ下るウナギも、回遊魚の一種ということになります。このような回遊を行う魚は非常に多く、移動の形態・規模も多種多様です。

2. 回帰本能があるふぐはどの種類?

回遊魚が移動を行う目的は、主に二つあります。一つ目は餌を得るためであり、季節によって食べ物が豊富な海域を求めて棲みかを変えてゆくのです。そして二つ目は、繁殖のためです。稚魚の成育に適した場所へ産卵を行うために集まるのです。
産卵場所への移動は、魚にとっては自分の生まれた故郷へ戻ることを意味します。このような習性は回帰本能と呼ばれており、特にサケ類が自分の産まれた河川に遡上することで有名です。
実はふぐの仲間にも、回帰本能を持つ種類が発見されています。フグ目は現在までに世界で300種以上が記載されており、一般的に知られているふぐの仲間であるフグ科の他にも、カワハギやハリセンボン、マンボウといった魚が属しています。ですが、その中で回帰本能を持つことが確認されているふぐは一種だけです。それは高級食材として有名なトラフグです。東アジア沿岸に分布するトラフグは、夏から秋にかけては外洋海域を広く回遊する一方、冬から春にかけては産卵のために、日本沿岸の内湾へ移動していることが判明しています。ふぐの中でトラフグだけに回帰本能が発見されているのは、高級魚として経済的価値が高い魚であり、生態に関する研究も盛んに行われている結果でしょう。今後の研究の進展によっては、他のふぐの仲間にも、同様に回帰性を持つ種類が発見されるかも知れません。
ちなみにカイユウセンニンフグという種類のふぐがいますが、この「カイユウ」の名は、発見に携わった水族館の海遊館にちなんだもので、回遊の習性が確認されているわけではありません。

3. ふぐの回帰行動はどんなことをするの?

回遊魚の持つ回帰性は、生物の本能として生まれつき刷り込まれたもので、誰から教わったものでもありません。トラフグは卵から孵化すると、稚魚の時期は産まれた内湾の中で過ごします。内湾は浅くて岩礁や藻場などの隠れ場所が多く、天敵となる大型魚から身を守りやすいためです。やがて成長したトラフグは、より多くの餌を求めて内湾から外洋へと移動していきます。そうして、東シナ海や黄海といった外洋で餌を探して広く回遊しながら成魚となり、やがて繁殖のために生まれ故郷である日本沿岸の内湾へと戻ってくるのです。
サケが川で産まれた後、海に下って大きく成長し、やがて自分の産まれた川に戻ってくる回帰行動は古くから有名です。しかし、それは浅くて狭い川で行われるために観察が用意だったからこそ知られていたのです。広大で深い海で暮らすふぐの観察は容易ではなく、生態も長い間謎に包まれていました。最近になってようやく、トラフグという一種のふぐの産卵回帰性が明らかになってきたに過ぎません。今後も調査と研究の積み重ねにより、トラフグの生態がより詳らかとなり、また他の種類のふぐについても習性が明らかとなる日が来ることでしょう。

4. ふぐのタンパクな身と回遊魚の関係性

皆さんは、ふぐの刺身を召し上がったことがあるでしょうか?ふぐ刺し、あるいは関西地方でテッサとも呼ばれるふぐの刺身は、盛りつけた皿の絵柄が透けて見えるほどに薄く切られた薄造りが一般的です。これにはちゃんとした理由があります。ふぐの代表格トラフグの身は繊維質で、淡白な味わいです。刺身を他の魚と同じような厚さで切ると、弾力がありすぎて噛み切ることが難しくなります。そのためにふぐ刺しは薄造りにしているのです。
トラフグは高級魚で希少だから、少しでも長く味わえるように薄く切っている、という俗説も存在しますが誤りです。美味しく味わうための必要性から、薄く切られているのです。
ふぐの身の繊維質とは、すなわち筋肉です。外洋で長距離の回遊を行うトラフグは、遊泳を続けることで体が鍛えられており、その結果として高タンパクで低カロリーな、歯ごたえのある身となるのです。ふぐ刺しの醍醐味と言えば、コリコリとした食感と淡白ながら噛めば噛むほどに出てくる濃厚な味わい。それも、トラフグが回遊魚だからこそです。

5. どのくらいのスパンでどこへ行って帰ってくるの?

トラフグの生まれ故郷は、日本沿岸の内湾であり、瀬戸内海や有明海、玄界灘、若狭湾、伊勢湾などの産卵海域が知られています。これらの浅い内湾で産まれたふぐは、稚魚から幼魚の段階を経て、外洋へと移動していきます。そして、広く回遊しながら成魚となり、2~3年後には回帰本能によって産まれた場所へ戻ってきますが、いくつかの生態群があることが分かっており、「東シナ海、日本海系群」、「瀬戸内海系群」、「伊勢湾、遠州灘系群」の3つの系統が存在しています。
東シナ海、日本海系群のふぐは、東シナ海から黄海、日本海にかけて広く回遊していて、1月から3月に九州沿岸や瀬戸内海、若狭湾などへ産卵に訪れます。
瀬戸内海系群のふぐは、伊予灘から豊後水道、紀伊水道といった太平洋に面した海域を回遊し、春になると瀬戸内海の浅瀬で産卵します。
伊勢湾、遠州灘系群は紀伊半島から駿河湾にかけての太平洋岸沖を回遊し、4月から5月に伊勢湾と三河湾へ産卵に訪れます。
ちなみにサケは川へ遡上して産卵を行った後は死んでしまいますが、ふぐは産卵後死ぬことなく再び外洋へと戻り、何度も産卵を繰り返すのです。

まとめ

日本料理を代表する高級食材のふぐ。その淡白でコリコリとしていながら濃厚な旨みを含んだ身の秘密は、回遊魚という生態にあることが分かりました。ふぐの仲間の生態は他にもまだまだ分かっていないことが多く、日本人としては今後の研究の進展にも期待したいですね。