1. 陸上養殖とは?メリット・デメリット
  2. 海洋養殖とは?メリット・デメリット
  3. なぜ陸上養殖が増えているのか?
  4. 本来どちらの姿であるべきなのか?
  5. 毒のないフグがつくれる?

1. 陸上養殖とは?メリット・デメリット

陸上養殖とは、その名の通り海以外の陸地で行う養殖方法です。海洋養殖と違い漁業権が発生しないので、設備投資が可能であれば新規で養殖を始めることができるメリットがあります。他にも、海洋養殖と違い水質や餌の管理を自分たちで行えるので、赤潮などのダメージを受ける心配がありません。陸上養殖で主に取り入れられている閉鎖循環式と呼ばれる水質管理法は、水中に残った餌や排泄物を泡で除去したり、窒素やリンを濾過槽で除去したり、紫外線で殺菌したりと工夫されているので、ウイルスや細菌などの混入確率は限りなく低く、防疫面でも安心です。気候に左右される心配もありません。
ある企業の食味試験結果では、海洋養殖のトラフグよりも陸上養殖のトラフグのほうが味や食感などに優れており、天然ふぐに限りなく近いという結果が出ています。海洋養殖は力のいる作業が多いですが、陸上養殖はある程度はオートメーション化されているため、シニア世代でも対応可能な業務内容です。
デメリットとしては、海洋養殖ではほとんどかからない電気水道代や、設備投資などといったランニングコストが生じることと、停電などの突発的な出来事で被害が拡大しやすいこと、一度飼育層で感染症が発生してしまうと、被害が拡大しやすいことです。

2. 海洋養殖とは?メリット・デメリット

海洋養殖とは、海の中で生簀を使って行う養殖方法です。養殖場所が海そのもので行うので、海水を思う存分使えることが最大のメリットです。自然の潮通しのもと、良質な環境下で養殖が可能です。しかし、海洋養殖は水質の管理を自分で行うことはもちろんできず、海そのものの自然条件に委ねてしまうことになります。赤潮や寄生虫の発生をきっかけに水質が悪化し、結果ふぐが大量に死んでしまったり、台風などの気象の影響で生簀にダメージを受けやすいのがデメリットです。寄生虫対策に使用する薬剤や、養殖魚の排泄物で環境が劣化する可能性も否定できないことや、ふぐの養殖に適した沿岸域はどこでもよいわけではなく、穏やかな潮の流れの場所に限定されていることもデメリットのひとつです。陸上養殖と違い大々的に土木工事を行う必要はありませんが、生簀への餌やり、収穫などの作業には漁船を用いた手作業になるため、特にシニア世代には体力的な厳しさが生じます。他にも海洋養殖を行うためには漁業権が必要であるため、新規で養殖を始めるには、越えなければならないハードルが多々あります。

3. なぜ陸上養殖が増えているのか?

陸上養殖が増えてきている理由として、海洋養殖と違い飼育効率が高いことが挙げられます。確かに生産コストが高いというデメリットはありますが、天候や環境に左右されることがなく、飼育面では陸上養殖はふぐにとても優しい環境が提供できるのです。例えば、年間を通じて水温を調整できるため、養殖期間が海洋養殖より約30%短縮され、生産性の向上につながります。水流も水温も餌も一定しておりストレスの少ない状態で育つ陸上養殖ふぐは、攻撃性が弱く歯切り作業が不要でもあります。海水の塩分濃度の半分以下で育つため、身が透明で甘味を引き出した味わいと評判です。出荷時期を調整できるので、海洋養殖や天然のふぐが摂れない期間でも安定した供給が可能です。
また、生産者が特定できることから、卸先との信頼関係が密になります。現在は料亭などへの提供が多いのが現状ですが、この先陸上養殖がさらに軌道に乗れば、一般家庭の食卓に陸上養殖のふぐが並ぶ日も来るでしょう。
ミネラルや塩分が多く含まる温泉を利用して養殖している業者もあります。

4. 本来どちらの姿であるべきなのか?

本来、誰もがいちばんに求めたいふぐ本来の姿は、海洋養殖のふぐでもなければ陸上養殖のふぐでもない、やはり天然物のふぐでしょう。しかし、さまざまな諸事情でその実現が難しい昨今では、養殖ふぐで対応せざるを得ないのが現状です。これはふぐに限った話ではなく、実際2030年には食用水産物の6割以上が養殖水産物となると言われています。
地球温暖化や種の減少などで水産資源には限りがあるのが現状です。また、海洋養殖に適した場所に制約が多くなってきていること、海洋養殖従事者の高年齢化などから、今以上に海洋養殖が今後発展する可能性は低くなっています。今後は陸上養殖に力を入れていく段階に来ています。現に、平成25年より水産庁ではふぐや養殖に関する専門家や、陸上養殖システム開発者などとの意見交換を積極的に行い、現時点での日本のふぐ養殖の現状についてや、10年先、20年先を見据えた長期的な計画について、すでに検討の段階に入っています。

5. 毒のないフグがつくれる?

2016年、佐賀県とふぐ業界団体との間で起きた論争は、ふぐ毒に関して世間に一石を投じました。
佐賀県は以前から養殖ふぐの無毒化を図るために様々な研究を重ねてきました。
海洋養殖のふぐは、海底の有毒なプランクトンを餌にするため、内臓で有毒化されます。
なので、陸上養殖のふぐは、水槽で管理され無毒な餌を与えられるため無毒だ、というのです。
今回のこの論争は結論が出ないまま経過しています。理由は、ふぐ毒についての研究が現状においついていないためです。ふぐの猛毒のテトロドトキシンが、どのようなメカニズムで解毒されるのかが分かっていないのです。また、ふぐを食用に用いる国は日本とエジプトくらいです。日本ではふぐへの関心度は高くても、他国ではほとんど興味をもたれていないため、ふぐに関する研究はほぼ日本だけで行われています。膨大なデータを持ち合わせていない現状では、簡単に許可するわけにはいかないのでしょう。

ふぐの養殖方法には、海洋養殖と陸上養殖の2つがあり、それぞれにメリットとデメリットがあります。最近では陸上養殖が増えてきており、様々な工夫がなされています。
今後、日本でのふぐの食べ方は、天然のふぐよりも養殖のふぐを使ったものがますます多くなってくることが予想されます。